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 近年、博物館は収蔵している資料の一般へ開示する機会を増やし、あるいは館内においての展示方法を工夫するなど、より学びやすい環境を作り出している。数年前より、《神奈川県立 生命の星地球・博物館》では、加藤 昭博士の企画と指導の下で、櫻井鉱物標本などを直接手にとって観察する機会を設けている。これに合わせて詳しい資料集(総てをまとめると大変詳しい鉱物辞典となる)の配布もされている。
 《神奈川県立 生命の星・地球博物館》以外でも、同様に、国立科学博物館(最近改修工事が終わり日本の鉱物が展示されている)はもちろんのこと、茨城県自然博物館でも独自の捉え方で、地域の特徴ある地質環境と鉱物群を展示している。科学好きには大変ありがたいことだ。
 それでも博物館のスペースは限られており、展示しきれない多くの試料があるはずで、収蔵庫には我々の知らない産地の蛍石が眠っているに違いない、と筆者は考えた。フィールドが最も楽しいに決まっている。だが、フィールドに出る前に情報を入手するし、地質や鉱山の環境を学ぶのは当然だ。それ以上に、博物館の収蔵品への誘惑も働いた。もちろん館内で採集などできないのだが、言わば博物館探索の楽しみである。そこで《神奈川県立 生命の星・地球博物館》に相談し、収蔵している蛍石についての撮影を許可していただいたのである。
 第一弾として《神奈川県立 生命の星・地球博物館》収蔵の櫻井鉱物標本を紹介しますが、今後この企画では、許される範囲で、撮影を許可してくださる博物館や資料館などの協力をいただき、多くの試料を紹介してゆくつもりである。
 










 《益富地学会館(旧日本地学研究会館)》は、昭和48年に故益富寿之助博士のご尽力で設立された博物館で、アマチュアが鉱物・岩石・化石などを楽しむことに視点が置かれて運営されています。ガラスケースの中には貴重な試料があると同時に、素手で触れることのできる試料がたくさんあり、会員はさらに、収蔵試料を自由に出して観察研究ができるシステムが採られています。筆者が館内で撮影させていただいている間にも多くの子供連れの見学者が訪れ、化石や鉱物に興味を抱く小学校低学年の少年少女に、逆に大人が教えられているような場面もあるほどに利用者の層の広い博物館です。興味深いのは、企画によりアマチュアが採集した試料を展示している点で、収蔵試料も日々増えており、訪れるたびに何かしら新しい知見に出会える博物館です。博物館企画の採集会だけでなく、鉱物販売会、鉱物鑑定の検定、化石のクリーニング教習など、直接資料に接する企画も開催されています。
 今回撮影させていただいた蛍石は、益富寿之助博士だけでなく、多くの会員が採集し献蔵した試料です。その中から二十数点を撮影させていただき、下記のように分類して公開します。鉱物を美術品のように楽しむという西洋の伝統的な文化による収集品とは異なり、綺麗という点では見劣りするかもしれませんが、共成鉱物などの興味深い試料、数十年前に採集されたコリア半島産出の蛍石など、目にする機会の少ない試料もあります。ここでは、1ペグマタイトや花崗岩など深成岩の脈中からの産出試料を、2では熱水鉱床あるいは鉱脈鉱床からと思われる試料を、3ではスカルンからのもの、4としてコリア半島産の試料を紹介します。

   1 ペグマタイト

2 熱水性・鉱脈性

3 スカルン

4 コリア半島産New



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 櫻井鉱物標本とは、1993年に亡くなられた鉱物研究家櫻井 欽一博士の収集になる5万点に及ぶ膨大な試料のことで、実は鉱物だけでなく、化石や貝などの生物標本にまで及んでいるものです。現在、これらの標本は《東京国立科学博物館》と《神奈川県立 生命の星・地球博物館》の二箇所に分けられて収蔵されています。《東京国立科学博物館》が収蔵しているのは、日本産鉱物基準標本、外国産鉱物標本、貝類標本、《神奈川県立 生命の星・地球博物館》の収蔵となったのは、日本産鉱物研究用標本、化石標本、研究用文献です。これまで《神奈川県立 生命の星・地球博物館》では、特別展『櫻井コレクションの魅力』で標本の一部を公開しましたが、さらにその後、加藤 昭博士の企画と指導により、直接手にとって観察する機会が度々設けられてきました。この中から、約50点を撮影させていただき、簡単な解説を付しました。1では花崗岩に接した高温条件での結晶と考えられる試料、2として比較的地表近くで結晶したと考えられる試料を、3ではスカルンなどの環境での試料を採り上げます。

1 ペグマタイト性・花崗岩中脈状・深熱水性

2 浅熱水性・鉱脈性


3 スカルン



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