FLOWERITE GALLERY
Garden Crystal 結晶の中の風景

Photograph by H.Zenzai
contents


 インクルージョンの楽しさを再度確認したい。単に他の物質が含まれている鉱物というだけでなく、ガーデンクオーツと呼ばれるような、包有物などによって結晶内部に造り出された風景を楽しんでみたい。インクルージョンと言えば水晶がまず思いつく。我が国では、マリモ入り水晶、緑泥石入り水晶、角閃石入り水晶、赤鉄鉱入り水晶などが産出しており、いずれもコレクター垂涎の的となっている。今回は、結晶内に漂う包有物に関連するものではあるが、本来のインクルージョンと言うより、結晶内部の景色、結晶構造や接触部に現われた景色などを主に捉えた。
 2010年に開催されたTokyo Mineral Showのガイドブックに掲載した、同タイトルの企画に新たな試料を加えて紹介する。





水晶 Quartz + 雲母類 + 角閃石類
Diamantina, Jequitinhonha valley, Minas Gerais, Brazil

ガーデンクオーツと呼ばれる、水晶内に閉じ込められた庭園を想わせる雲母や角閃石による景色。 (Komuro Minerals)






蛍石 Fluorite + ヘイスティング閃石 Hastingsite + 鉱液
大分県大野郡緒方町尾平鉱山はじかみ坑

小さな針状のヘイスティング閃石が、蛍石の内部構造を浮かび上がらせている。微細な空隙とその内部の鉱液も同様。 (Goto Coll.)






水晶(紫水晶) Quartz + 蛍石 Fluorite
Amethysta do sul, Rio Grande do Sul, Brazil

微細なクリストバル石と蛍石からなる、紫水晶の中に浮かぶ白っぽい球。水晶の表面近傍に点在し、表面に開口していることもある。






水晶 Quartz + ブーランジェ鉱 Boulangerite
Yaogangxian Yizhang County, Chenzhou, Hunan, China

雲母などを含む微細な不明物資によるファントムがあり、細いブーランジェ鉱もうごめいているように見える。
この鉱山は産出鉱物の種類が多く、水晶や蛍石に包有された多くの鉱物が楽しめる。 (Komuro Minerals)






水晶 Quartz + 空隙
Herkimer Co., New York, USA

ハーキマーダイヤと呼ばれる、ずんぐりとした結晶形態の水晶は、その特徴的な形状から人気が高い。
タール質の物質を含む例もあるが、この試料は空隙があり、その内壁に陰の結晶面が現われてる。 (Komuro Minerals)






蛍石 Fluorite + 接触部の虹彩
大分県大野郡緒方町尾平鉱山はじかみ坑

蛍石はヘキカイが強く現われるため、衝撃によって割れやヒズミのある部分に虹彩が現われることがある。虹と称されている色斑である。
この蛍石の虹彩は、結晶と結晶の隙間に生じた自然のもの。自然の虹彩であれば、素直に楽しめよう。 (Mitsukawa Coll.)






水晶 Quartz + 角閃石
Madan ore field, Rhodope Mts, Smolyan Oblast, Bulgaria

紫色のファントムが入り、結晶の先端辺りに淡い緑色の角閃石が漂っている。 (Komuro Minerals)








水晶 Quartz + ルチル Rutil
Bahia, Brazil

光の加減によっては黄金色に輝くルチルを含んだ水晶。硬質のルチルが柔らかい髪の毛のように見えるのが楽しい。






水晶 Quartz + 角閃石 + 気泡
Madagascar

薄い板状の日本式双晶。含まれているのは緑泥石であろうか、表面に付着している物質もあるが、結晶内部に残されている流れるような気泡の様子も美しい。
マダガスカルでは、緑泥石、緑色の雲母、蛍石などなど、多くのインクルージョン水晶が見出されている。 (Komuro Minerals)






水晶 Quartz + 不明物質
Mt Malosa, Zomba District, Malawi

水晶内部にもやもやとしたファントムがある。水晶の背後にあるのはエジリンで、これが影響しているのであろうか、不思議な景色が生じている。 (Komuro Minerals)






水晶 Quartz + 雲母類 + 不明物質
Yaogangxian Yizhang County, Chenzhou, Hunan, China

水晶内部に球状の雲母類が漂い、上部には白い不明物質によるもやっとしたファントムもある。
表面に結晶しているのは雲母類と小さな錫石。 (Komuro Minerals)






方解石 Calcite + 自然銅 Copper
Quincy Mine, Hancock, Houghton Co., Michigan, USA

たいへん珍しい、自然銅の結晶を含んだ方解石。
自然銅は時と共に空中部室と反応して黒色化してしまうが、方解石の閉じ込められたままの自然銅は美しい光沢を保ったまま永遠に輝き続ける。
方解石は半透明だが、自然銅の様子は分かる。流通量が少なく貴重な試料である。 (Komuro Minerals)






緑柱石 Beryl(Aquamarine) + 鉄電気石 Schorl
Shigar Valley, Skardu District, Baltistan, Northern Areas, Pakistan

その名称の通りに頗る透明なアクアマリンは、それだけでも美しく魅力的だが、これに包有物があればなお楽しい。
この試料では半透明なアクアマリン中に真黒な電気石が存在感を示している。 (Komuro Minerals)






緑柱石 Beryl(Aquamarine) + 不明構造
Shigar Valley, Skardu District, Baltistan, Northern Areas, Pakistan

成長の過程で供給された物質が表面に残り、さらに成長した結果、現在の結晶内部にその痕跡が観察されるわけだが、斜に交差して格子模様にも見える。
自然の小さないたずらだが、なんて美しいのだろうと思う。 (Komuro Minerals)






水晶 Quartz + ルチル Rutile + 雲母類
Brumado, Bahia, Brazil

 極めて透明な水晶の内部にルチルの極細結晶が放射状に伸び、この上に雪が積もったように雲母が点在している。
息を吹きかけただけで細い針は揺れ動き、雪は溶けてしまうが、この水晶の包有物は危うい均衡を保ったまま、いつまでも私たちの目を楽しませてくれる。
指先で触れることもできそうに思えるのだが、決して手が届かない異空間、ガーデン水晶の魅力と言えよう。 (ミナス・サトウ)






蛍石 Fluorite + 雲母類
Xianghualing Mine, Linwu Co., Chenzhou Prefecture, Hunan Province, China

 庭園風景が結晶内部に広がっている蛍石、ガーデン水晶と同趣の試料。
方解石や苦灰石の微小結晶が積み重なった上に蛍石が成長した後、母体であった方解石や苦灰石が溶脱したものであろう。
Xianghualing Mineでは、このように複雑な景色が現われたり、苦灰石や雲母を内包する蛍石が産出した。






蛍石 Fluorite 結晶形態
Nikolaevskiy Mine, Dal’negorsk, Primorskiy Kray, Far-Eastern Region, Russia

 母体は白く不透明な八面体蛍石で、一部に黒い閃亜鉛鉱が観察されるが、この試料で見たいのは、八面体蛍石の表面各所に点在する透明な六面体蛍石。
その内部に、同じ蛍石の透明な八面体結晶の端部が突き出ているのが分かる。
内部の結晶と外の結晶とは違う環境で成長したことを示している。この地域の蛍石には、六面体を十二面体結晶が包み込んでいる例もある。






煙水晶 + 紫水晶 Quartz
Ambatondrazaka District, Alaotra-Mangoro Region, Toamasina (Tamatave) Province, Madagascar

 煙水晶が紫水晶を包み込んだ、松茸水晶のような風変わりな試料。
煙水晶は色黒く、内部の様子は観察できないが、紫水晶の上に第二世代の水晶が成長し、後に放射能の影響を受けた外部が黒水晶化したものであろう。
煙水晶の内部には空隙があり、時に水と気体が内包されている場合がある。 (Komuro Minerals)






岩塩 Halite + 不明着色要因
Carlsbad Potash District, Eddy Co., New Mexico, USA

深いブルーの色斑が美しい岩塩。
色の原因は青い物質ではなく、蛍石と同様に、岩塩の結晶構造に欠陥を生じさせるようなごく微量の元素や放射線が影響しているものと考えられている。
正確な意味でのインクルージョンではないが、結晶の内部に展開する景色は、包有物質が生み出す空間美に通じるものがある。
この色彩は外部からのエネルギーなどで減退する可能性があるので、保管には注意を要する。






トパズ Topaz + ヘキカイ部の虹彩
Mimoso do Sul Mine, Mimoso do Sul, Esp?rito Santo, Brazil

トパズは結晶軸と直角方向にヘキカイがある。
結晶内部のヒズミや微細な空隙、微細な気体などが要因でヘキカイ面が顕著に現われた例も多く、時として景色として楽しめる要素ともなっている。
この試料は、内部に複数のヘキカイ面が層状に現われ、これが要因の自然で綺麗な虹彩も観察される。 (Komuro Minerals)






アメトリン(紫水晶 + 黄水晶) Ametrine (Quartz) 双晶構造
Anah? Mine, La Gaiba District, Sandoval Province, Santa Cruz Department, Bolivia

 双晶により、紫水晶(アメシスト)と黄水晶(シトリン)が一つの結晶内部に交互に生じている珍しい水晶。透過光で観察すると、紫の中にある黄色の斑が分かる。
結晶軸と直角に切って観察することが可能であれば、構造は明瞭。鉱物成長が示した不思議な結晶内風景である。 (Komuro Minerals)

contents

I LOVE FLUORITE 蛍石大好き