FLOWERITE GALLERY
Etching

Photograph by H.Zenzai
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きりっと整った結晶は美しい。しかし、表面が溶変した結晶も美しい。地中奥深くで熱水やそれに含まれる酸などの影響を受け、あるいは地表で風化した鉱物類がそれである。特に鉱物では結晶の表面に現われた鉱物特有の溶解面の様子を蝕像と呼んでいる。ここでは、蝕像にとらわれず、広い意味での溶解した鉱物類の様相を眺めたいと考えている。
2009年TOKYO MINERAL SHOW ガイドブックに掲載した 《溶解面の表情・・・写真で楽しむ鉱物》 に追加。





Fluorite
Rock Candy Mine
Grand Forks, Greenwood Mining Division, British Columbia, Canada
蛍石は酸に弱く、蓚酸程度で洗浄しても表面が白くなってしまう。それ故に溶解した結晶の表面には興味深い文様が現われる。成長の速度の違いや、不純物の含まれている様子などが溶解の程度の違いとなって現われるのである。この蛍石は、溶解と成長が繰り返されたと想像される。妙味ある表情である。






Fluorite 蛍石
Hiraiwa Mine 平岩鉱山
岐阜県関市上之保
天水などの浸食でヘキカイ部分から深く鋭く切れ込みが進んだ例。蛍石は特にヘキカイが顕著であるため、そして天水などの影響を受け易い環境にあると、このような美しい腐蝕が観察される。表面がざっくりと切り込まれており、完全な逆光で観察すると、雲母や輝沸石のように薄層を繰り返し反射しながら伝わり来る光が、あるいはヘキカイを伝わり来る光が美しい。






石英質岩
Gobi, Mongolia
ゴビ砂漠の中で、永い年月に亘り漠砂によって表面が侵蝕され磨かれた石英質岩であると説明を受けている。次の試料と同様に溶解や風化とは異なるが、酸やアルカリなどの液体を介さない広い意味での腐蝕とも言い得よう。表情が何とも魅力的である。自然の驚異であることを信じたい。






三稜石(風蝕礫:Ventifact)
静岡県御前崎町白羽
海岸の砂によって蝕を受けた岩石試料。浜辺の転石が、常に同じ方向から吹き付ける風によって砂の衝撃を受け続けた結果、石ころの表面に方向性のあるくぼみが生じたものである。三稜とは三角に尖っている様子を指す。自然の美しさを感じ取ることのできる試料だが、鉱物趣味の方には興味が薄いかもしれない。






Fluorite 蛍石
豊栄鉱山
大分県豊後大野市(旧大野郡)緒方町 Mitsukawa Coll.
蛍石は色々楽しめる要素を含んでいる。鉱物が溶解する場合、含まれている物質や結晶を構成している構造の微妙なバランスにより、その程度の違いが結果として大きな形状の違いとなって現われる。累帯構造に沿って溶解したりヘキカイに沿って溶解した例は多いのだが、このように鋭く尖った構造を示す理由はどこにあるのだろう、ふしぎだ。結晶構造にも無関係であるように思えるのだが。特異な例であろう。






Topaz トパズ
Piaotang Mine 漂塘鉱山
Xihuashan intrusion, Dayu Co., Ganzhou Prefecture, Jiangxi Province, China
割れた面が溶解し、再び成長し、そしてまた更に溶解したと推測される、綺麗な溶解面である。端整な結晶面より変化に富んだ面を好む筆者は見飽きないのだが・・・。






Topaz トパズ
Piaotang Mine 漂塘鉱山
Xihuashan intrusion, Dayu Co., Ganzhou Prefecture, Jiangxi Province, China
鉱物の蝕像の形状は、結晶面によって異なる場合が多い。表面に現われる結晶構造が異なるからで、トパズの場合には、隣合う庇面では方向が90度違っている。この写真ではその様子が良く分かる。結晶内部に虹色が観察されるが、蛍石の場合と同様、内部に生じた割れ目での干渉光である。本来はないほうが良いのだが、時には写真として楽しむ要素となる。






Calcite 方解石
Kobushi Mine 甲武信鉱山
長野県南佐久郡川上村
ヘキカイにそって侵蝕された試料。方解石は酸によって溶解され易いので、このように溶解の途中で綺麗に残っている例は趣味者にとってはうれしい。時には菱面に沿って切り込みが複数入り、層状結晶の集合のように見える場合もある。






Fluorite 蛍石
蛍鉱山
福島県南会津郡南会津町(旧館岩村宮里)小高林
蛍鉱山には六面体結晶と八面体結晶の両様があり、いずれも溶解して蝕像を示すものが多い。六面体結晶の場合には端部が溶解して丸みのあるサイコロ状、八面体の場合には空隙に突出した頂点部分が丸くなり(写真の右下)、時にここが再成長して半球に近い結晶が見られることがある。写真の左上辺りは結晶面で、ここにも蝕像が顕著に現われている。






Fluorite  蛍石
Rosiclare Level, Minerva Mine
Hardin Co., Illinois, USA
硫化鉱物の表面に成長した蛍石の、その内部の硫化物が溶解脱落し、次いで内部から蛍石も溶解している。累帯状に性質の異なっている様子が溶解によって想像できよう。この鉱山では、写真のように蝕の進んだ例が多く見られる。欠損のない結晶だけが美しいというわけではない。






Beryl 緑柱石
山ノ尾
茨城県桜川市(旧真壁郡)真壁町 Nishii Coll.
淡い緑色の頗る透明な結晶で、表面がスポンジ状に微細な蝕像で覆われている。この産地の緑柱石は、空隙からの産出物であれば本来は端整で光沢がある。ところで、岐阜県の福岡鉱山ではスポンジ状の緑柱石が普通に見られた記憶があるも、原因は異なるようだ。






Fluorite 蛍石
La Viesca - La Collada area
Pola de Siero, Asturias, Spain
紫の六面体結晶に特徴のある、スペインLa Viesca地域産の蛍石。結晶の外周部よりも内部の溶解が強い点はMinerva Mineの蛍石とと同様。結晶度の差異、不純物の違いによるものであろうか、紫のいろの層位によって溶解の程度が微妙に違っており、溶け残った部分が内部に突出し、想像を超越した美空間を生み出している。






Fluorite 蛍石
Mahodari
Nasik District, Maharashtra, India
インドの蛍石は球状に成長することは良く知られている。母岩は多孔質の玄武岩で、その壁面を石英が覆い、その上に方解石や蛍石が生じている場合が多い。この試料は方解石と絡み合うように成長したもので、後に方解石の一部が溶解したことにより蛍石の側面が露出し、成長に関わる微妙な層状の構造が浮き彫りとなった例。溶解が成した意図せぬ美しさと言えよう。






Spodumene リチア輝石
Sapucaia Mine
Minas Gerais, Brazil
ピンクから無色へと連続するバイカラーが魅力の宝石質のリチア輝石。リチア輝石の蝕像は主に端部に鱗のように現われることが多く、この鉱物の魅力の大きな要素となっている。






Topaz トパズ
蛭川
岐阜県中津川市 (Komuro Minerals)
蝕像トパズの言葉があるように、西洋では溶解して奇妙な形となったトパズが楽しまれている。この試料はなんと15センチで2キログラムを越える単結晶。蛭川では、稼業していたころにはトパズは多産したものの、これほどまでに大きな結晶は多くはなかったようだ。とにかく、淡い青からピンクへと連続するバイカラーの魅力、透明感のある宝石質の魅力、これらを背景に洞窟の奥を見るような、ふしぎな魅力がある。以下は同じ試料。






Topaz トパズ
蛭川
岐阜県中津川市 (Komuro Minerals)
深く食い込むように蝕の進んだ柱面。この試料の最大の魅力だ。






Topaz トパズ
蛭川
岐阜県中津川市 (Komuro Minerals)
内部が淡い青緑色、端部が淡いピンクのバイカラー。表面は蝕像が顕著ながら、内部は透明で宝石質。得がたい試料である。






Topaz トパズ
蛭川
岐阜県中津川市 (Komuro Minerals)
トパズに特徴的な蝕像。感動してしまうのは筆者だけではないだろう。この試料についての詳細は、コムロミネラルズに問い合わせ願いたい。

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I LOVE FLUORITE 蛍石大好き